レモネーコ先生どうしよう!
どうしたんだ!?
クライアントに契約書を頼まれたけど、書き方が分からないよ!
先日、お悩み・質問ご相談フォームにて
イラストレーターは依頼が来たら自分で契約書を作るのですか?
というメッセージをいただきました!
実際、フリーランスや副業でイラストの仕事をしていると、企業・個人を問わず契約書を交えることがあります。
8~9割ほどの案件は相手に契約書を作って貰って、イラストレーターはそれに同意するだけになります。
しかし、まれにイラストの発注に慣れていない相手からの依頼があり、その際はイラストレーターに契約書を頼まれる事があります。
でも契約書ってなんだか難しそうな気がしますよね。
ですが安心してください!イラストレーター歴3年で大手企業を含め30社以上と契約書を交わしたことのある麦田このみが、普段から雛形として使用しているテンプレートを公開します。
しかもイラストレーターが契約書を作る場合、できるだけこちらの有利になるように契約書を作りたいですよね。
今回は、イラストレーターが有利になる契約書の例文を置いておきますので、ぜひコピペして参考にして下さい!
イラストレーターが有利になる契約書の例文テンプレート
Word形式でダウンロードできます。
特に赤字にしている部分は、依頼の内容によって弄るといい部分です。
自分の「こうしたい!」と思う内容に沿って、内容を加筆したり削ったりして使ってください!
あくまでベースだから、自分の仕事に合うように大幅に編集してもいいぞ!
イラスト契約書の各条のよくわかる解説
文章が難しくて解説が必要そうな部分を、簡単に分かりやすく解説しました!
第1条 (委託)
1 本契約は、乙が甲に対して発注する、次項に定める委託業務について適用される契約であり、本契約に基づき、甲乙間で締結される委託業務に関する個別契約に適用される。
ここで契約内容の具体的な内容を表にします。
ひとつひとつの項目を文章にしてもいいのですが、表の方が見やすいのでオススメです!
2 甲は独立した営業者として本業務を乙から受託するものであり、甲乙間に何らの使用従属関係も存在しないことを確認する。
ここでは、「イラストレーターは、クライアントの社員やメンバーとしての関係性を持たず、受注して生産するだけの他人同士の関係ですよ」と言っています。
第2条 (検品)
この条はクライアントの音信不通や納期遅れを防止するためのものです。
1 乙は甲より本著作物の納入がなされた日から3日以内に、納入された本著作物の検査を行い、甲に通知するものとする。ただし、過誤その他の瑕疵があったときは、直ちに甲に通知するものとする。
「絵が納品されたら3日以内に確認して、修正箇所があったら早く連絡してね!」って意味です。
2 甲による本著作物納品の日から3日経過しても、乙が甲に、前項に基づく検査の結果を通知しない場合には、当該納入物は前項所定の検査に合格したものとみなす。乙が正当な理由なく本著作物の受領を拒否し、甲が乙へ当該成果物を納入した日から前項の期間を経過したときも同様とする。
「先ほど決めた返信の日数(今回の例では3日)を超えても連絡が無かったら、勝手にOKということにしますよ!
あと正当な理由がないのに絵の受け取り拒否をした場合でも、勝手にOKにしますよ!」ってことです。
※「3日」の部分は自分の好きな日数に変えても構いません。
音信不通になるクライアント、意外といるぞ…
音信不通が不安なら、念のためこの条は書いておくといいね。
第3条 (保証及び責任範囲)
この条ではイラストレーターが間違った内容で納品した場合の対応方法を書いています。
1甲が乙に納品する納入物には、不良品や瑕疵がないことを甲に保証し、この保証は本著作物の納品日から3ヶ月間有効とする。
「納品してから3ヶ月までなら、イラストレーターが間違って描いた部分を修正対応しますよ!」ってことです。
例えば、赤い目のキャラが欲しいと言われていたのに、間違って青色で塗って納品してしまった時などですね。
2 納入物であるイラストが、乙の指定する仕様書に従ったものではなく、かつ、このことが甲の起因する原因によるときは、甲は、前項に基づく保証期間中は、甲の単独の費用と責任において、イラスト上の過誤の訂正・補修等を行う。
「もしイラストレーターがクライアントの指示に従わなかった時は、3ヶ月の間は自費(=追加報酬なし)で修正しますよ。」という意味です。
※「3ヶ月」の部分は自分の好きな日数に変えても構いません。
イラストレーターの立場としては納品を終えたら完全に終わりにしたいけど、自分の間違いは修正した方が誠実だから信頼されやすくなりそうだね!
第4条 (権利の帰属)
この条では、誰がイラストの著作権を持つかを記載しているので大事な条です。
1 本著作物の著作権は甲に帰属する。乙から提出された作成指示書、テキスト原稿、画像等については、乙に帰属する。
「制作したイラストの著作権はイラストレーターにあります。」
「ただ、クライアントが『こんな感じで描いて欲しいです!』と見せた指示書や画像(クライアント先で制作したもの)などの著作権は、クライアントのものです。」
と記載されています。
2 制作途中に、制作案等の用途に使用して納品物として採用されなかった制作物に関する所有権及び使用権は甲に帰属する。
「イラストレーターが依頼用に描いてボツになった画像の著作権は、イラストレーターのもの」ということになります。
この条を入れることが、この契約書を書く最大のポイントになるぞ!
自分が著作権を持ちたいときは、絶対に書いておこう!
第5条 (利用許諾)
1 甲は、乙が本著作物を表②及び表③の目的で、表⑥の範囲でのみ使用することを許諾する。
2 乙が本著作物を表②及び表③の目的以外で使用する場合には甲の許可を得なければならない。
3 乙は、甲の文書による同意なしに上記1及び2で定める制作物の使用権、改変権を第三者に譲渡、移転、またはその他の処分を行うことはできない。
「第1条で書いた表のとおりにイラストを使ってください。もしそれ以外で使用したい場合はイラストレーターに許可を取ってください」
という意味です。
クライアントが数年後に、想定外の使い方でイラストを使用することを防ぐための条だぞ!
イラストレーターが著作権を持っている時は、使用方法を自分で決められるもんね!
第6条 (独占的利用許諾)
前条の許諾は、独占的なものとし、甲は、乙以外の第三者に対し、(1)印刷物における複製、頒布、(2)インターネットホームページにおける掲載の各形態で本著作物を利用することを許諾してはならない。
「イラストレーターはクライアントのためだけに絵を描くので、赤の他人にはイラストの使用許可を出さないことにします。」ってことです。
これはクライアントに信用してもらうための条だぞ
いくらイラストレーターが著作権を持っていても、関係ない人にイラストを使われたらクライアントも困っちゃうもんね…
第7条 (著作者人格権)
1 甲は、乙が本著作物を利用するにあたり、その利用態様に応じて本著作物のサイズの変更、色調の変更、文字の挿入、一部を切除することを予め承諾する。但し、乙は、これら改変であっても本著作物の本質的部分を損なうことが明らかな改変をすることはできない。
「イラストはイラストレーターに著作権があり、絵をめちゃくちゃに加工するのはダメです。でもキャラの雰囲気が保っていれば勝手に加工してもOKです。」という意味です。
『イラストをトリミングしていいですか?』とかいちいち連絡されても面倒だからな…
2 乙は、前項以外の改変を行う場合は、事前に甲の承諾を得なければならない。
「1で書いた『サイズの変更、色調の変更、文字の挿入、一部を切除する』以外に加工したいときは連絡してね」ということです。
イラストをどこまでなら勝手に改変していいか、自分で決めておこう!
3 本著作物は、甲の名義とする。
「著作人格権はイラストレーターにあります。」ということです。
著作人格権はわざわざ記述しなくてもいいのですが、念押しで書いています。
第8条 (保証)
甲は、乙に対し、本著作物が第三者の著作権その他第三者の権利を侵害しないものであることを保証する。
「イラストレーターが納品する絵は、他のイラストや写真を違法にパクったりトレースをしてないよ」と宣言しています。
第9条 (対価)
乙は、甲に対し、イラスト作成業務の対価、その他本契約に基づく一切の対価として、本報酬を支払う。
「イラストを描く代わりにお金をいただきますよ」って意味の念押しの文章です。
第10条 (本報酬の変更)
前条第10条に基づく本報酬の金額に関しては、本条各号のいずれかに該当する場合には、甲は、該当することとなった日から、7日以内に、乙に再度見積書を提出することにより、乙に対して本報酬の変更を請求することができるものとする。
1 乙に起因する原因により、乙がイラストの仕様を変更するとき
2 乙に起因する原因により、乙が本著作物の納入期限を変更するとき
3 乙が提供する原始資料の遅延及び過誤等が原因で、甲による制作に掛かる費用が増加したとき
4 乙が正当な理由なく過多な回数の修正を申し出るとき
5 乙が正当な理由なく大幅かつ複雑な修正を申し出るとき
この5つのリストに書いてある、「クライアント側が原因のトラブルが起こったら、イラストレーターは7日以内に報酬額を変更できるよ」ってことです。
※「7日」の部分は自分の好きな日数に変えても構いません。
トラブルがあったときはクライアントと慎重に交渉するかもしれないので、1週間くらいの余裕があった方が良いかもだぞ!
第11条 (キャンセル)
万が一、乙の都合で本業務をキャンセルする場合は、乙はキャンセル料を支払うものとする。
途中でキャンセルされたら、イラストレーターは制作時間の損になってしまうので、制作の段階ごとにキャンセル料を設けておくといつキャンセルされても安心です。
第12条 (二次的利用)
1 本契約の有効期間中に、本著作物が印刷等、二次的に利用される場合、乙はその利用に関し事前に甲の承諾を得なければならない。
2 本著作物の二次的利用にあたり、乙は報酬等具体的条件について甲と協議の上決定する。
「元々言われていた利用範囲とは別の用途が出てきた場合は、話し合いして決めましょう」という意味です。
第13条 (秘密保持)
甲及び乙は、委託業務に関する機密情報について取り扱いがある場合、甲乙間にて別途協議の上、機密保持約に従って取り扱うものとする。
例えばまだ未発表のゲームのイラストの制作を請け負うとき、イラストレーターがゲームの発売前にSNSなどでその情報を漏らすとクライアントはゲームの売り上げなどにも響くので困りますよね。
情報を外部に漏らしてほしくない時はクライアント側が「機密保持契約」(=外部に情報を漏らさないのを約束する契約)を提案してくれます。
そこで「機密保持契約はこの契約書とは別途で交えますよ」ってことです。
機密保持契約を結ぶ場合にこの条を入れよう!
機密保持契約は企業の案件のときに結構ある契約だよ!
第14条(即時解除)
甲及び乙は、以下の事由が生じた場合には、何らの通知、催告なくして本契約を解除することができる。
①本契約に定める義務に違反し、相当の期間を定めて催告しても違反状態を改めない時
②手形、小切手の不渡りを発生させたとき
③死亡し、又は制限能力者となり、本業務の遂行が不可能又は著しく困難になったとき
④相当の期間を定めて勧告しても連絡がとれなくなったとき
契約内容で何度警告しても聞かなかったり、料金未払いになったり、音信不通・病気・死亡などお仕事が全く進められなくなった場合は、お互い依頼自体を無断で解除できるということです。
第15条 (事故処理)
本契約に基づく委託業務の遂行に支障をきたすおそれのある事態が生じた場合は、速やかに相手方連絡するとともに、甲乙協力してその解決処理にあたるものとする。
他に何かやむを得ない事情があれば話し合いして決めましょうってことです。
第16条 (不可抗力)
天災事変、戦争、暴動、内乱、同盟罷業、争議行動その他不可抗力により本契約の全部または一部の履行の遅延または不能が生じた場合は甲および乙は共にその責を負わないものとする。
主に災害や戦争などがあってどうしてもお仕事が遅れる場合は、お互い責任を問わないようにしましょうって意味です。
第17条 (その他)
本契約に定めのない利用態様については、甲乙別途協議の上、利用の可否、対価等につき決するものとする。
「この契約書に書いていないことは、クライアントと話し合いして決めましょう」という意味になります。
イラストの契約書が完成したらどうやって渡す?
メールで送る場合
契約書が完成したら、一番初めの甲の「印」欄にあなたの本名の認印の画像を貼りつけて、クライアントに内容を確認してもらいましょう!
認印の画像作成は『くいっくはんこ』様などで作ることができます。
認印が挿入できたら、Wordの文章をPDF保存して、メールで送ります。
郵送で送る場合
企業だとたまに『郵送して送ってください』と言われる場合があります。
その際は契約書を印刷し、甲の「印」欄には自分の手で印鑑を押して封筒に入れて郵送してください。
これで契約書のやりとりは終了!
イラストの制作、頑張ってね!
さいごに
契約書って読んでいると眠くなるし堅苦しいので、苦手な人は多いと思います。私もとっても苦手です。
ですが言い回しが難しいだけです。中身を解読してみると意外と、ただのお願いや約束ごとを書いているだけです。
今回の記事で契約書の苦手意識をなくして、お仕事が円滑に進められるようになることを祈っております。
契約書の内容はよく確認してお仕事しよう!
▼「契約書を交わした後の、依頼の理想的な流れを知りたい!」という方はこちらをどうぞ!
▼「自分のイラスト料金設定が高いか安いか分からない…」という方向けに、イラストの料金相場表まとめました!
参考文献:藤原 唯人『著作権で迷った時に開く本 Q&A イラストレーターのための法律相談』カナリアコミュニケーションズ 2013 171ページ
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