レモネーコ先生どうしよう!
ネットにAIイラストがすごくいっぱい投稿されてる!
知ってるよ、たくさん溢れてるね
もうイラストを手描きしても意味ないのかな〜…
2022年の夏ごろ以降、『Stable Diffusion』や『NovelAI』といったAIイラスト生成ツールが拡散されたのをきっかけに、AIイラストがTwitter(X)やPixivなどで大量に見かけるようになりましたね。
このブームを受けて、イラストを趣味にしている人や仕事でイラストレーターをしている人はこう思いませんでしたか?
こんなに簡単に絵が描けるんだったら、もう人間が絵を描かなくてもよくなるのが心配…
イラストを描き続けるか、辞めるか、悩む…
実際に私もAIイラスト生成ツールが流行っている状態を常に眺めており、今後のイラストとの向き合い方について考え続けておりました。
数ヶ月ずっと考えて、ようやく私の中で答えが出てきました。
そこで今回はAIイラスト生成ツールによる絵師の影響と、絵師のAIイラスト活用法について、イラストレーター歴4年の麦田このみが考察しました!
まず前提としてこのサイトはイラストレーター向けなので、当然ながら絵師さんに寄り添って書いております。
ただ一方でAI自体は実際に素晴らしい技術で、絵が描けない人でも簡単に整ったイラストを出力できる画期的なツールだと考えています。
私はこの両者がうまく折り合いをつけていける方法を考えていけたらと思い、この記事を書いております。
ちなみに私は『Midjourney』、『NovelAI』、『お絵描きばりぐっどくん』を実際に3か月ほど使用しました。
AIイラスト生成ってどうやってやるの?
AIイラストを生成するには、基本的にどのツールも言葉で欲しいイラストを英語のワードで指定するだけです。
まるでGoogle検索をすればそれに沿ったサイトや画像が検索されるように、言葉の組み合わせで欲しいイラストが新しく生成されます。
その上で例えば『NovelAI』では画像と言葉を組み合わせてイラストを生成できたり、『お絵描きばりぐっどくん』では日本語に対応されていたり、細かく機能が違っています。
基本的には言葉の組み合わせで新しいイラストを生成できるのがAIイラスト生成ツールだよ!
イラストを描く人全員に共通する、AIイラストのメリット・デメリット
絵師にとってのAIイラストのメリット
ラフの時短になる
パッと見いい感じに仕上がったイラストができあがるので、完成形がすぐに見えるのがAIイラストのいいところです。
骨格、デッサンが絶対に狂わないというわけではないですが、整って出力される確率は高く、崩れていないイラストをピックアップして参考にすればラフにかける時間が減ります。
AIイラストを”トレース”してもいいかどうかの是非はまだ議論中で、確定的な判断はつかないぞ。
あくまで参考にするだけの方が、今のところ安全だね!
▲イラスト制作を時短したいときは、こちらの記事も参考してみてください。難易度別に時短テクニックを紹介しています!
自分のイラストのクオリティアップになる
例えば『NovelAI』には『img2img』という機能があり、ラフをある程度描いてしまえば完成形が出力されます。
その完成形を見て線画や着色などを真似すれば、いつもの絵よりも多少はクオリティを上げられます。
絵師にとってのAIイラスト生成ツールのデメリット
言葉で言い表しにくいものを意図して表現できない
AIイラストにはまだ出力するのに得意な分野と苦手な分野があります。
例えば「走る」「座る」みたいな単純な動作はAIが言葉を理解して絵を出力してくれます。
しかし細かい動作は言葉で指示するのが難しいです。
ネット上では一見うまくいったように見えるイラストもありますが、実は突然変異で出てきたイラストを人間が選んでいるだけです。
狙って思い通りの絵を作ることはとても難しく、かなりの時間と経済面のコストがかかります。
全く絵が描けない人にとっては、それでも夢のようなツールかもしれないけど、絵が描ける人にとっては、微調整が難しくてかゆいところに手が届かないぞ!
結局お金と時間がかかる
さっきも記載しましたが、絵が描ける人にとっては、かゆいところに手が届かない絵が生成されます。
しかもあれこれ出力ワードを考える時間も必要ですし、細部までこだわった絵を出力するにはお金がかかります。
それなら自分で描いた方がいいって思うかもしれませんね。
例えばこちらは『NovelAI』のスクショ画面です。このイラスト1枚を作るのに0,09$(およそ12円)かかります。
それだけ聞くと安いように思えますが、だいたい1発では思い通りにできません。
もう少し露出度を下げたい→出力→もう少し表情を笑顔にしたい→出力→不要な要素を消したい→出力…というように微調整をするたびにお金がかかるので、10$(およそ1400円)くらいすぐに溶けて消えます…。
絵柄の統一が難しい
人間のイラストレーターは絵柄が統一されていることが多いです。
絵柄=ブランドみたいなもので、「この絵柄は●●さんの絵だ!」と一瞬で判別できてそれが見る人にとって安心感や信頼感になってプラスイメージになり、やがてその絵師さんのファンになります。
しかしAIイラストは絵柄の統一ができず毎回バラバラになってしまい、不安感や人間味のなさ(botっぽさ)を感じてしまいます。
ちなみに私の場合は自分の絵柄で新規イラストを作りたかったのですが、自分のいつもの絵柄や着色と全く同じものが作れず「誰が描いた絵…?」ってなってしまいました。
AIイラストツールは自分の代わりに絵を描いてくれる役割にはなりにくいです。
ちなみに『mimic』というAIイラストサイトなら、自分の絵柄を読み取って新しいイラストを出力してくれるね!
オレはそのサイト、ずっと申請待ちをしていて返事が来てないけどな!
ただそのサイトもまだ顔部分だけしか生成できない
もっと技術が上がれば、もしかしたら自分の代わりに全身イラストを描いてくれるようになるかもだな!
AIイラストの蔓延で、趣味で描いている絵師は一部だけ影響を受けるをするかも?
ここからは、趣味でイラストを描いている人はAIイラストの蔓延とどう向き合えばいいか解説します。
結論としては、「一部の人は影響を受ける」です。
AIイラストの蔓延で影響を受ける絵師とは
AIイラストの蔓延で影響を受ける人とは、例えばキャラが立っているだけのようなシチュエーションや個性の薄い絵を描くことが多い人です。
そういったイラストはみんながよく描くイラストであり、たくさんの学習もとがあるのでAIにとっては得意な分野です。
なので、そういったイラストを描いても埋れてしまう可能性は高いです。
ただAIイラストがあふれる前からネットには絵の上手い人がたくさんいて、ただキャラ絵が上手いだけでは埋もれる状態でした。
いずれにしても作者や作品自体に個性がないと画像の山に埋もれてしまう状態が、AIの登場によりさらに加速しただけとも言えます。
でも個性を出してもAIに学習されちゃうんじゃないの?
たしかにイラストの個性もAIに学習されちゃうけど、でも基本的にはAIよりも人間が描く絵の方が価値があるよ!
AIイラストの蔓延で影響を受けない絵師とは
AIイラスト生成ツールで描けない絵を描く人
先ほどはイラストを趣味にする場合、立ち絵のような絵を描く人が影響を受けると書きました。
なので逆に言えば、学習データが少ない絵を描ける人はAIイラストが出力に不得意なため影響を受けません。
具体的にはこんなイラストです。
- ニッチな属性のイラスト
- デフォルメがかなり強いイラスト
- シチュエーションが特殊なイラスト
「ここからがニッチでここからがニッチじゃない」ってのは流行などで数年ごとに変わるものなので、具体的には言えないです。
しかしAIイラストはとにかく学習量によって得意不得意があります。
学習が足りてないようなジャンルはまだまだ出力が不鮮明ですから、AIイラストであふれることは少ないです。
影響を受けても受けなくても、絵が描けたり芸術の実践的な知識があるのは有利だぞ!
絵が描けることが不利になったり、無意味になることはない!
悲観しなくてよさそうだね!
AIイラストの蔓延でイラストレーターの仕事はなくならない
先ほどはイラストを趣味にしている人に焦点を当てていましたが、次は絵を仕事にしている人はどう対応すればいいか解説します。
結論としては、AIイラストによってイラストレーターの仕事はなくなりません。
以下でその理由を挙げていきます。
AIはレイヤー分けができない
AIはまだレイヤー分けができません。不透明なpng画像でのみ出力されます。
仕事でイラストを描いている人は、例えばゲームや本の表紙など様々な用途に流用するために、線画のデータと着色のデータを細かく分ける必要があります。
ですがAIイラスト生成ツールの場合はAdobe系の形式には対応しておりません。
もしAIイラストのPSDデータが欲しい場合は、出来上がったイラストを自分で線をなぞって自分でレイヤー分けして、自分で着色しなおす必要があります。
でもこれって絵が描けないとできない技術で、誰でもできるわけじゃないですよね。
いくらAIイラスト生成ツールが進化したとしても、少なくともイラストレーターは「レイヤー分け師」のような形でイラストの仕事は残りそうです。
たとえこれからAIでもレイヤー分けができるようになったとしても、仕事に使うような細かいレイヤー分けの調整はやっぱり絵が描ける人がやることになる思うぞ!
AIにも描けないイラストはある
AIが得意なのは、「みんながよく知っている雰囲気のイラスト」です。なぜなら学習データがたくさんあるからです。
逆に「みんながあまりよく知らないイラスト」は学習データが少ないため出力される絵の精度が落ちます。
仕事でイラストを生み出すときは、だいたいが新しいプロジェクトの新しいイラスト・新しいキャラクターなので「あんまりよく知らないイラスト」に該当しますので、AIイラストの苦手分野です。
もちろん突然変異的に個性のある絵が出力されることはあるけど、意図して出すのが難しいみたいだね…
絵師によるAIイラスト生成ツールの活用法
ここからは絵を描く人がどうやってAIイラスト生成ツールを活用していくかをまとめます。
現状の活用法
ラフをアップロードして完成画像のイメージをつかむ
『NovelAI』にある『img2img』という機能で、画像をアップロードしてAIに完成画像を描いてもらうことができます。
この機能を使って、ラフの完成イメージを具体的に画像に起こして自分の制作の参考にすることができそうです。
頭の中でイラストの完成図を想像するのって意外と自分でも難しいので、可視化されていると絵の制作スピードがあがるかもしれません。
ポーズや表情の参考にする
例えばイスに座っているキャラのイラストって資料がないと描くのが難しいですよね。
そこでAIイラスト生成ツールでイスに座っているキャラのイラストを出力して資料にすれば、あまりパースを崩さずに素早く思い通りのイラストが描けるかもしれません。
もしAIイラストの著作権について議論が固まったら
AIイラストの技術はまだまだ発達途上で、著作権絡みの議論の最中です。
ですがもし「AIイラストは生成者の著作物になる」と世界的に決まり、商業でも積極的に使えるようになった場合、以下のような活用法もできるようになります。
絵が描ける人ならではの高クオリティなイラストを短時間で描ける
もしAIイラストをトレース、加工してOKとなれば、絵を描く技術がある人の方がよりAIイラストを上手く修正できます。
絵が描けないけどAIイラストを生成している人よりもさらに細かい指定のイラストを叶えられるため、絵が描ける方が有利になります。
AIイラストを有料で修正するイラストレーターになる
先ほどもすこし触れましたが、イラストを1から描かずにAIイラストを修正するだけの作業が仕事になります。
AIイラストの著作権絡みがクリアになれば、企業もAIイラストをたくさん使うことになるので、イラスト修正師としての仕事は需要がありそうです。
これはこれで夢がありそうですね!
このあたりはAIイラストについての新しいルールが整備されていく可能性があるぞ!
今後のAIイラストの議論の動向には注意しておこう!
さいごに
絵が描けないAI絵師より、絵が描けるAI絵師の方が当然ながら有利です。
そしてAIイラストよりも人間が描いたイラストの方が価値があります。
ただAIイラスト生成ツールも今まで以上にはやいスピードで技術が発達していきます。
今のうちにAIのことを理解しておいて、情勢の流れでどう活用するか決めましょう!
AIイラスト生成ツールを触ってみて、これからの情報にもチェックしておこう!
▼AIイラストについて解説されている電子書籍もあります!
こういった時事ネタを入手しておくことも絵描きには重要なことなので、チェック必須です!